子供をつくろう
にゃんしー

子供をつくろう、ぼくらは。

僕たちはあまりに多くの人を
失ってしまったから
子供をつくろう

埋め合わせるためでなく
失った人のことを伝えるために



子供をつくろう、ぼくらは。

僕たちは優しかったあの人を
失ってしまったから
優しい子供をつくろう

埋め合わせるためでなく
いつかあの人のオムレツが
おいしかったことを話すために



子供をつくろう、ぼくらは。

僕たちはかわいかったあの子を
失ってしまったから
かわいい子供をつくろう

埋め合わせるためでなく
たまに見せるえくぼが
とても好きだったことを
やっと伝えるかんじで



子供をつくろう、ぼくらは。

僕たちは弱かったから
多くの人を奪われてしまったから
強い子供をつくろう

取り戻すためでなく
思い出を守っていってくれるように



ばーちゃんのしわだらけの手から
とーさんのごつい手から
女の子のやわらかい手から
赤ちゃんのちっちゃい手から

そしてかーさんのお腹を触って
子宮の中の命まで
脈々と繋げてく

ために


子供をつくろう、ぼくらは。

僕たちはあまりに多くの人を
失ってしまったから
子供をつくろう

埋め合わせるためでなく
失った人のことを伝えるために





ほら
コウノトリが飛んでった

その向こうをかすめる火葬場の煙
骨を軽すぎると形容するのは
子供たちが計り方を知らないから。

彼ら彼女らが遺した
言葉や体温、シャンプーの香りが
白いカケラにずしりと
こびりついている。

だから
骨をゆっくりひもとき伝える。
風が流れてく。


そして今年も暑い夏がきた。
来年も夏はくる。その来年も。

種はやがて大輪のひまわりになり
ショートホープは値上がりして
子ネコは町の王様になり
空は背丈のぶん少し低くなり
思い出は未来になる。


ぼくらは子供をつくろう。
また、会えるように。


自由詩 子供をつくろう Copyright にゃんしー 2008-06-24 22:37:22
notebook Home