チェス駒・薬・真夏・宝石
こうや

ぶつかるならば消して消されて 
チェス駒を進めるよに
規則的に混雑を闊歩したいよ

--------

時間が間延びしてしまったので
一刻一刻を回収している
処方された薬があまりにちっぽけすぎるから
自省に足るかな なんて思う

--------

闇から流れてくる盆踊りの音は
幼いわたしの胸をいつもわしづかみにしていた

近年は倦怠期なのか
はたまた心が変態したのか
ベランダの網戸に手をあてて
ゆらいだ音を耳の入り口あたりで聞いているだけだ

向かいに住む少年が
ソーダ水の色したビーチサンダルで
音のする方へと坂道を駆け下りていく
「楽しんでおいでね」と
半分嘘の言葉をつぶやく

唯一こんな真夏の時にだけ
大人になったのだと実感できる

---------

一億くらいの宝石を 
懐にこっそり抱えて歩いたならば
虚栄でも笑っていられるだろうか


自由詩 チェス駒・薬・真夏・宝石 Copyright こうや 2008-06-24 18:01:49
notebook Home 戻る