いけない
あすくれかおす





(波の音、)

過ぎゆくものを
尊しと思いつつ
記憶も躊躇いも
心に残さず

静かなものにこそ
いっそう厳しく答え
逆巻いてくるものには
烈情を抱かず

(漁火が遠ざかっていく、)

夜の風景は沈黙をまもり
言葉が橙の光を帯びて
どれも間違いに見えてしまうが

新しきものは元より
この源に在りはしない

そういった瞬間的なよぎりを
船尾供養にして港を去る
左手で不器用に傘を握って
ガードレールを真っ二つに切る動作

(警笛なる、)

音を振り向かない努力をする
地面を蹴りつけると何だか悲しくなる
何にも欲しがってはいないが

いけない 
また嘘をついてしまう









自由詩 いけない Copyright あすくれかおす 2008-06-22 08:34:25
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