西の姫星
亜樹

学者のエタは考えた。
西のお空の姫星が
ある夜不意に消えたのは
一体何が悪かろと。


のまず喰わずで
三日三晩
寝ても醒めても
空ばかし
あるとき派手に転がって
こさえた擦り傷なんのその
手を貸す人も
いないまま
今日も一日
空ばかし


学者のエタは考える。
西のお空の姫星が
あの夜不意に消えたのは
隣の町の
粉曳きに
ちょいと逢いたく
なったため。
さもなきゃ暗い夜の海
大きく広い口空けた
真っ赤な貝に誘われて
真珠になってしまったか。


学者のエタは考える。
今日飽きずに
空ばかし


自由詩 西の姫星 Copyright 亜樹 2008-06-22 00:15:59
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