リピート機能
千波 一也
傷つけられた一言を
あとから何度も
思い出す
酌
(
く
)
むべき意味が
あったのかもしれない、と
一人でそっと
思い出す
けれどもそれは
あらたに痛みを増やすだけ
やっぱりそうか、と
うなだれるだけ
それでもときに
恥ずべき己がみつかって
やさしい刃のかすめるように
厭
(
いと
)
うに足らない
痛みをおぼえる
ひとは
哀しい機械です
壊され方やなおされ方を
迎えるでもなく
拒むでもなく
かぼそい指に
触れたものだけ
何度も
何度も
ただ確かめる
違わぬことは
おろかなほどの
リピートです
正しいこと、とは
何だろう
幾つもみつけて
幾つもうしなう疑いのなか
ひとのこころは精密に
信じることを
思い出す
何度も違わず
機能する
自由詩
リピート機能
Copyright
千波 一也
2008-06-19 14:41:10