日向の匂い
銀猫

灰色の雨が上がって
ようやく緑が光り始めた
葉脈を辿る水の音さえ
響いてくる気がする

穏やかな五月の庭で
白いシャツが揺れる
遠くから届く草野球の掛け声が
太陽を呼ぶ


きみも
こんな陽射しの下で
空を仰いでいるのだろうか
きみの背中も
日向の匂いがするのだろうか
きみにまつわる物語は
むしろ神話のようで

幾つもの川に隔てられて
向こう岸に渡れずにいるわたしは
暖かすぎる空気が哀しく
爪を噛んでみたりする


思い出はときに
こころに針を刺し
寂しさに膨らんだ胸を
ぱん、と破裂させる

けれど
今日も笑顔で暮らすのだ
こんな悲しみ方がどこかにあっても
いいのかもしれない




自由詩 日向の匂い Copyright 銀猫 2008-06-01 13:31:20
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