虹色ほっぺの冒険者 〜詩人・dice覚え書〜 
服部 剛

 今月の「ぽえとりー劇場」に参加してくれたdice
さんが朗読した詩のテキストを送ってくれたので、当日
の雰囲気を思い出しながら、レポートを補足します。朗
読のレポートは感覚的に書いていますが、やはりテキス
トを読むと、より言葉を味わいながら感想が書けると思
います。

 diceが朗読した「虹色ほっぺ」はタイトルからし
てオリジナリティがあります。 

  ( 自分という存在の内側に眠る黄金水脈 )

は、本当は自分の内にある、ということを伝えてくれま
す。一人の人間という業を宿した存在の一番奥に、同時
にピュアな魂が在るというカオス(混沌)を感じます。 


   雲が迫ってくる日
   雲が迫ってくると感じられる日
   君はどうするんだい?
   空が落っこちてくる
   差し迫ったタイミングだが
   仮眠中


 この連は緊迫感を秘めたながらも答の見えない現代の
病理を表していると思いますが、そんなどうしようもな
い世の中の流れや自分自身を滑稽に思うユーモアを忘れ
ず(仮眠中)というところがdiceらしく、この(仮
眠中)には「まだ本当の眠りからは覚めていない」とい
う本意があり、ダブルミーニングな感じがします。 
 しかも?この(仮眠中)は以前にアメリカで暮らした
diceが朗読するのを聞くと「Comingtune」
という異なるDeepな次元への誘いのかけ声のように
聞こえるのも密かに面白いと思いました。 

 最後の連はdiceらしいポジティブさが凝縮されて
いると感じ、街へと飛び出してゆくdiceは現代の冒
険者であり、アグレッシブに朗読する彼の頬が不思議な
虹色を帯びているのが見える気がしました。そしてこの
詩の最後の言葉が 


   一緒にしばし仮眠中 


というところに、diceの「粋」を感じます。「大事
な誰かと仮眠中」・・・それは恋人かもしれないし、か
けがえのない友かもしれないし、いろいろ想像できます。

 先日の「笑いと涙のぽえとりー劇場」も、日常の現実
をそれぞれに背負って歩みながら、胸に空いた穴や、そ
れを貫いてゆく詩人達の自分らしい命の言葉を、一つの
詩の夜に集う皆で味わいながら共有する「仮眠中」の空
間なのかもしれないと思うし、裏を返せばそれは同時に、
Bens Cafeの詩的空間は、「仮眠中」から目覚
めた次元でそれぞれの日常の現実に帰ってゆく・・・と
いう場になってゆくことを思いながら、先日のdice
が朗読する姿を目に浮かんで来るようです。 



※テキストはMixiのdiceのページで読めます。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=604951401&owner_id=4360141 








散文(批評随筆小説等) 虹色ほっぺの冒険者 〜詩人・dice覚え書〜  Copyright 服部 剛 2008-05-30 07:57:30
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