蜘蛛の糸 
服部 剛

仕事帰りで我が家の門を開き 
玄関まで5mの並木を通る 

「 うわっぷ! 」 

木と木の間のくらやみに 
はりめぐらされた蜘蛛の巣に 
ぼくの顔が引っかかる 

(そそくさと、木葉このはの茂みに逃げる、蜘蛛の影) 

翌朝「いってきます」 
洗面台で顔を洗う祖母に告げ 
昨日をすっかり忘れたように 
やるきまんまんで玄関を開く 

門までの5mの並木  
朝日に透けた巣の中心に 
昨日をすっかり忘れたように 
居坐っている蜘蛛が一匹

「 おぬし・・・ 」 

糸の端を指でつまんで 
片方の木葉の茂みに 
巣をたたむ 

「 蜘蛛さん、ごめん 」 

ひとこと呟き 
荷物を背負しょって、門を出る 

見えない糸を 
ぼくも尻から出しながら 





自由詩 蜘蛛の糸  Copyright 服部 剛 2008-05-27 21:00:55
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