反戦地帯
狩心

腹のハイフン カスケードの灯火
無灯火で走るバイク 顔面に穴ぼこの山

先人達がこともあろうか
絶縁地帯を山の奥に潜めた
湿地の山は
みるみるうちに山の麓の村を
魔界の虚心兵へと仕立て上げる



時代が見る見るうちに雪崩に
息はテトラポッドの病棟
消えたはずの恋人達が
ひそひそと眉をひそめて

天空に緑 心の奥にスカイブルー
目の前の空が池の中でホトトギスを作成する
裏表がない顔面の
のりしろ

あたかも
地平線から舞い出 鶴 そして亀
笑い声はとうに消えた
宿直の看護婦がカンテラを持って徘徊する
指先はピンクのマニキュア
三角帽の中で爆撃が続く

どうやら
来てしまったようだ
光が細く 蜘蛛を張る場所
レントゲンの中に 空洞の世界

あたかも
舞い落ちるヴァルキリーと
雷を背負った神父の鏡

絶縁地帯

炎天下の歩道橋を渡る
インド人がヒンズースクワットをしていて
腹には赤い棘が刺さっている
誰にも気付かないように呼吸する

硝子の破片が道端に

イエローやオレンジ
それらの暖色系が
蛇になる

バス停に絡みつき
商店街の看板はすべて折れ曲がる
地形は静かに
段々畑から平地へ

手を一つ置いておくだけの
セレナーデ

桜の花びらが海を渡り
カモメとミミズの子供を産む
爪の中にパズル
皮下脂肪が血管を圧迫する

電車が来ない
あの宇宙に広がったまま


自由詩 反戦地帯 Copyright 狩心 2008-05-27 17:26:04
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