ランナーは笑う
音阿弥花三郎

スポーツのような真昼。
停止すべき者へ慰みを贈った
健康的な半裸の男(声はない)。
シンナーの臭いは坂の途中で会う女。
足をぬぐう女。
育児書を引き裂く女。
過去の頂点を崩す女。
それらすべてを筋肉質の腕で抱く
ランナーたち。
抱いて笑う走者たち。
笑いは乾いた地に水をまく。
濡れたフィールドをまたいではいけないのか!
ランナーの
口の端の
白い唾液。
昼は知らぬ間に暮れる。

スポーツのような深夜。
二人の汗の混合液。
笑いながらランナーは
核めざして滑り落ちてゆく。
夜は
奇抜な平面を持った夜は
彼の笑いの中で成長し
長い足の関節を鳴らす。

暗く狭い箱の中に
ランナーの小麦色の臀部が盛り上がる。
夜は明けようもないのだ。


自由詩 ランナーは笑う Copyright 音阿弥花三郎 2008-05-26 21:57:17
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