「 ぼくはふたにぎり、でもすこし。 」
PULL.







一。

 ぼくは二握り、でも右隣の席のヒダカくんは一握りと半分。だけど膨張する前のぼくは小指と同じで、ヒダカくんは人差し指と同じぐらい、おっきいのはイイコトだと左隣のミギタくんは言うけれど、ミギタくんのは左手の中指よりもちょっと小さくてムケてない、ムケているのはクラスでぼくとムナカタくんだけで、ムナカタくんはムケカタくんと呼ばれていたのに先週転校してしまって、ムケているのはぼくひとり、ムケるのにはきっと理由があるとムナカタくんはぼくに言っていたけれど、ムナカタくんが転校した理由はムケたムケカタくんだったからで、だからぼくはムケた皮を伸ばして被せて、変装している。


二。

 いつも寝る前に被せるために皮を引っぱって伸ばしていても、朝になればぼくは二握り、もうムケている。ムケている男子はクラスでぼくひとりだけど、女子にもひとり、ムケている女の子がいると前の席のイマエが言っていた、女の子はムケるとどうなるのか、ぼくは知らない、イマエも教えてくれなかった、引っぱって、ぼくのみたいに被せて変装することもできるのだろうか?胸がどきどきしてかたくなると、それは膨張するのだろうか?ぼくは訊いてみたい、だけど、ぼくはムラセの前だと、胸がだくだくと音を立てて鼻の奥がつぅんとしてそこがムラムラしてずきずき痛いぐらいに膨張してぼくはいつもよりもおっきくなって二握りと少し、前屈みになってしまう。


三。

 どろりとしたものが二握りと少し先から溢れてぼくは、あわてている。夢の中でぼくはムラセに二握りと少し、握られていた、ムラセの手は汗ばんでぬるぬるとしていて握りながらムラセは、ぼくを引っぱり、ぼくは皮も被らずどこまでも引っぱられてその先で、目が醒めたら溢れていた、どろりどくどくと、根本から先に向かってぼくは二握りと少し、溢れていた、指先に付いた白いどろりを舐めると、にがい、味がした、ムラセはこんな味がするのだろうかと思うと、さらにどくどくと、どろりが溢れた、ぼくはもうあわてなかった、今日ならちゃんとムラセの前に、立てる気がした。












           了。



自由詩 「 ぼくはふたにぎり、でもすこし。 」 Copyright PULL. 2008-05-25 20:22:06
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