生まれたて
そらの とこ

まだ生まれたてのかさぶたを
引っ掻き 剥がしてしまいたかった
もう傷は治ったの!
もう歩けるの!
そう言いたくて
無心で 膝を 引っ掻いた
ペロン とめくれた ソレは
放射線を放っているかのように
近づきたくも 二度と触れたくもなかった
めくれたそのとき
痛みが
と血が滲んできた

アァ アァ アァァ
急に悲しくなったよ
慌ててティッシュで隠す傷
ごめんね まだ君は泣いていたいんだね
泣いている姿を隠していたんだね

そうは言っても私には関係のないことなので
痛みはイライラに変わる
何で傷なんか作ったの!
何でかさぶたをはがすの!

もしも私が生まれたてだったなら
肺呼吸をすることとおっぱいを飲むことに夢中で
0.1秒さえも新鮮で
視界は白く薄桃色にかすみ
何も恐れず
たくさんの顔を見ては 笑い 泣き
泣いてはお母さんのおっぱいを飲む
知らないから ヨゴレ 知らないから
赤ちゃんの肌はおっぱいの色と一緒だよ

生まれてから何年経つ?
私は21年と数ヶ月
あなたの肌は綺麗で羨ましいんだ
私の肌には ヨゴレ が
洗っても 洗っても 洗ってもっと 洗っても
消えない
消えないのは
心の中の蜘蛛の巣とか 心の中の荊とか 心の中の溝とか
この傷も消えないのかな
うですてて

もう私は黒じゃありません
もう私は白でもありません
そう言いたいけれど
昨日つけた傷が泣くよ
ごめんね
ごめんね私 やっぱりオカシイんだ
独り泣いて
かさぶた作る

もうかえれないね


自由詩 生まれたて Copyright そらの とこ 2008-05-24 00:34:18
notebook Home