トレイシーといふ超人
蘆琴

トレイシー、君は薄弱なる山椒魚。教育を存分に施され、踊る間もないほど気違ひと戯れる。
散切り頭のサムライと白眉の秀才とを比ぶれば、畢竟古語辞典の中のをかしと成り果つ。
接吻の味はアスファルトよりも積乱雲に近いと、筵に胡坐かく先生が仰ったので、真に受けたのかい。
味を遺すのは糞、君は袋を被って廻ってゐるが決して悟ることはない。
さう、電柱を攀じ登る処女を咎めることはできないのだ。虚無:所謂天国。
ロードローラーにひき潰された肖像画が叫べば叫ぶほど、金切り声が目玉から溢れ、
足の裏からはキリスト教徒が這ひ出してゆく。
地獄:すなはち明日への希望、過去を並べた展覧会への出席。
いつまでも書簡体に拘ってはいけないと感じ始めてゐたから、今ここに豚の尻尾を用ゐる。
彼らの泣き声は山河に響き、勿忘草を川辺に摘む醜女は男を思ふ。戦争、かつてない娯楽。
永遠に生きる人へ。


自由詩 トレイシーといふ超人 Copyright 蘆琴 2008-05-16 16:11:29
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