ダウナー
有邑空玖


これきりにしようと云って
飲み込んだ言葉は届かない誓い
夜の闇にも 朝の光にも
世界が終わる兆しはなくて
いつだって同じ毎日だ


  朝顔が咲いています。
  緑色の葉は光を蓄えて、キラキラ。
  今年も夏が来ました。
  君がいない、十度目の。


アスファルトは熱を持って
少しも優しくない
あたしが接吻くちづけたら
終わるかな、全部
陽炎だって本物に成りたい


  かき氷は抹茶ミルク。
  夏祭りは終わってしまうから楽しい。
  君の代わりに呟いて、
  アセチレン洋燈ランプ、どうして寂しくなるのでしょう。


未だに微熱を引き摺っているよ
どうせ百年後には誰もいない
それでも続いていくのが不思議
遠くから蜩の声
夏でさえ終わりが来るのに


  その腕は振り解いたんじゃなかった?
  あたしから? それとも君から?
  いつから此処にいるんだっけ?
  ……判らないよ。


沈み込んだ意識を葬りたい
手を伸ばしても届かないくらい
深い深い水底に
そしたらあたし きっと安らかだ
もう思い出さなくて良い

せめて寂しくないように
終わらないなら、永遠に夏を。


自由詩 ダウナー Copyright 有邑空玖 2004-07-09 20:25:20
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