フラッシュバック
田代深子



誰にくれてやることもせずむさぼった
粗いフィルムの陰影を透しスカートから
のぞくガーターの片りんを思う
音量は振動となり骨肉に伝う こんなときには
ありがたい むさぼるだけ
むさぼって誰の目も見ず帰りたい
水気のない塩気もないフリットをわしづかみ
はみ出すほどつめこんで
むせるまい
ストッキングの上の白い

ききすぎるエアコンで鳥肌をたて
鉛筆の尻を囓りとる むしり吐き捨て
また囓る ジーンズとカットソーのすき間に
たっぷりの背肉が剥き出してある むしる
囓る吐き捨てる
サンダルの先は小指の割れた爪にペディキュア
木目に舌を這わせ炭素の
冷たさに

ぬるい雨 こんなときはありがたい頭頂から
こめかみに流れる一滴をなぞり
高すぎる歌をうたってみる裏返り
震えとぎれ踏みはずすペダル 植込に右足を
つっこんで歌はとめず歌を
うたいつづけて
抜いていった白い傘の白いふくらはぎ
アスファルトにおう夜を
とらえそこね




自由詩 フラッシュバック Copyright 田代深子 2004-07-09 06:45:25
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