フォーク
森さかな

できれば少女のまま
死にたかったのに
 
 
星を撃ち落として
泣いた
 
 
冷蔵庫のなかの花は
ひんやりしてた
 
 
リボンは全部
捨てた
 
 
だれかの孤独を
見破って
 
 
恋という字を百回書けずに
放りなげた
 
 
ブランコに
乗って
 
 
いくつもの鳥を
見失っていった
 
 
色鉛筆は
もうなかった
 
 
知らないパパと
キスした
 
 
いつのまにか
ピアノは売られていた
 
 
祈りは
しなかった
 
 
重い重いと
つぶやいて
 
 
わたしとだれかと
わたしとあなたが
 
 
どこにも
いないことを確認した
 
 
どこかにいても
猛烈に失うから
 
 
少女のまま
死にたかったのにね
 
 
おかしいね
時計がおかしいね
 
 
天体望遠鏡は
いらないよ
 
 
すべて
墜落していった
 
 
どこにも
いないから
 
 
たくさん
泣いたと思って
 
 
満足したような
気持ちがした
 
 
やわらかいお布団のなかで
寝て
 
 
もうわたしは
目覚めなくていい
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
知らない人たちが
 
たくさんきれいなグラスを
割っていく
 
 
そのまま
 
破片のなかを
ずっと泳いでる


自由詩 フォーク Copyright 森さかな 2008-05-09 19:24:54
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