彼のための形だったのに彼がいなくなった彼女の形は戻すのに一体どれだけの時間が。
REMINGSセシル

時の道がふたつに分かれていて
彼がこっちを彼女がそっちを
行きます




それまでは何年もずっと一本道
だったので
彼らはお互いいろんな夢を
語りこれ以上ないまでに
理解し、彼は彼女を
ふかく理解し愛していました

一本道を歩く中で
彼は、犬になり魚になり空になりました
彼女の望む姿に形を変えていきました

また彼女も猿になり水になり、
雲になりました

ふたりは時を経るうちに
愛しあい、憎しみあい、
最善の形になり
ふかく理解し愛し合っていました



しかし、道はふた手に分かれていました
彼はその時魚だったので、
水の中へ続く道へ進むしかなかった

彼女は
雲だったので空へ続く道へ
進むしかなかった




彼は
今まで自分が変わってきたものの
形を考えていました

そして今彼には
りっぱなうろことひれがついている。


雲になった彼女の目にはうっすら
涙が浮かんでいました。
そして
最後に彼に優しさを贈りました。


彼女は空の世界で
今まで変化してきたように
また変化して
道を進みます。

彼の望むように形を変えて
生きてきた彼女は
最後に、生きてきた中で一番楽しい旅だったと
彼に、
彼は、本当にありがとう。
本当に楽しかったと彼女に。


彼はもう
水の中に。

水の中から
彼は時の一本道を振り返ると
ふたりが変化するのに捨ててきたたくさんの
ものが
砂のように
ちらばっていました

砂はきらきらと光っていて
彼はみとれてしまいました


彼女はもう彼のために変化することはなく、
彼も彼女のために変化することがなくなりました


彼女の様々に変わってきた形を
彼は思い出し
涙が止まりませんでした
しかし
水の中では
涙が出ているのか
出ていないのか
空へ昇っていく
彼女にはわかりませんでした


自由詩 彼のための形だったのに彼がいなくなった彼女の形は戻すのに一体どれだけの時間が。 Copyright REMINGSセシル 2008-05-08 13:34:01
notebook Home 戻る この作品のURL