禁じられた四月
千波 一也



どこか遠くへおもむけば
わたしの近く、が増してゆく

いつも近くの
わたしのつねを
だれかは、異国と
語るだろう



冷静に燃えながら
情熱的にこごえ
停止する
四月、

ほんとの陰と
ほんとの日向とを
おもむろに、
奪い



はじまりかけた過ちを
欠けさせた日の記憶

そのつぐないは
いつ、どのように
終わるべきだろうか



寒暖の差が
あゆみ寄りきらない四月、
手のなかで握る透明が
汚れてゆく、

けれどそれは
ふたつと無い習わし


よく似た形で
禁じられかたの有り様が
水たまりのうえに
揺れている、
のが見える


まだ浅い
春の底





自由詩 禁じられた四月 Copyright 千波 一也 2008-05-07 13:50:48
notebook Home 戻る  過去 未来