絵日記
jin

あったかくて親密な壁との対話に
身体の内部が地震になるほど
たましいがふるえすぎて沈んでいたんだ
そろそろ何か、雌豹なムードを求めたくて
つっかけ履きで捨鉢気分で
買い出しっぽく突然外へ抜け出すのさ

失礼します、そんな卑しい気持ちを込めて
世界をつなぐこの果てしない交通に参加したんだ
衛星カメラに探知されない荒れた路地を
わがもの顔やわけしり顔で練り歩いていく
七色のハイウェイを女の子の手作りバスで
強引に突き抜けていく夢想を抱きながら

瓦礫から予兆に満ちた蜥蜴が顔を出し
上空に憂鬱な雲が厳かに集いはじめる
空地では千切れたリボンの斜眼の少女が
菌の繁殖した冷蔵庫に見とれている
恐竜展の終わる日をなぜか覚えているように
記憶の片隅にそのあどけない表情が残り続ける

冷ややかな雨が弱った身体に降り注ぎ
狂った生命の愛しさに半身痺れているんだ
祈りに似た熱っぽい感情で、自分自身泡立ちながら
地面を覆う粒子の輝きと反発を踏みしめていく
足元のタブロオに身体中の色をだらだらと垂らして
ちっぽけで汚れた絵日記を夢中に描き続けるのさ。


自由詩 絵日記 Copyright jin 2008-05-03 22:28:39
notebook Home 戻る  過去 未来