親鸞の鍬  
服部 剛

昨日の僕はくたびれて 
仕事の後の休憩室で熟睡し 
帰りのバスを待つ
怠け者の朝 

ベンチに腰掛け 
一冊の本を開く 

昔々、見知らぬ地へ流された 
無一文の身で額に汗して畑を耕す 
親鸞さんの姿を描いた伝記に 
目を細める 

日照りの路面に 
つらなる蟻の一列が 
今日の糧を求めて 
行進していった 

陽炎の揺れる交差点を 
ヘルメットを被る男達が 
皆で脇に一つの梯子を抱え 
横切っていった 

今日の休日を過ごしたら 
明日は親鸞さんを
胸に納め 

畑の土に立つ親鸞さんが 
鍬を振り下ろす一瞬が 
いのりそのものであるように 

お年寄りを介護する僕が  
さしのべるこの手を 
いのりそのものとしたい 





自由詩 親鸞の鍬   Copyright 服部 剛 2008-04-30 11:14:05
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