雨のち、チョコレートバー
Hitotsuyanenoshita

かなしいことなんか
ないよ

雨の日にであった
女の子がいった
かなしいことなんか
ないよ
チョコレートバーの
包装を
ひりひりはがして
そこから
むぐむぐ食べていた
わたしにも
くれた
包装が雨でぬれて
手がすべって
なかなか
チョコレートバーを
取り出せない
とおりかかった
きんじょの
スーパーの店員さんが
みかねて「かして」
ぬれた包装をものともせず
手早く取り出して
わたしにくれた
店員さんはスーパーの
チョコレートバー売り場を
任されている
いつも
チョコレートバーの棚の前で
チョコレートバーを
眺めている
チョコレートバーが
大好きなのだろうなと思う
スーパーに
買い物にいくと
いつも
その様子でいるのを
みつけられる
あかるい赤色の
半透明のビニール傘で
店員さんは
遠ざかっていく
チョコレートバーの
たくさん入ったレジ袋が
傘からとび出ている
ぽたぽた
雨にぬれている
でも
店員さんは
ぬれた包装をものともせず
手早く
チョコレートバーを
取り出せるのだ
わたしは
女の子がくれて
店員さんにとりだされた
チョコレートバーを
食べる
ナッツとヌガーと
チョコレートと
どこでまじっているのか
わからない
遠いところの
甘さがする
かなしいことなんか
ないよ
女の子がいった
駅前の
花時計の前は
いつも
雨が降っている










自由詩 雨のち、チョコレートバー Copyright Hitotsuyanenoshita 2008-04-29 11:20:11
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