熱情
六九郎

小さいときの彼は
割と人見知りのほうだったと思います
竹棒の先に白墨挟んでね
線を引きながら道を歩く
不思議とそんな遊びに熱中するような子でした
長々と続いた白線を振り返って
嬉しそうでね
いつもポケットに教室から持ってきた白墨
何本も入れてましたっけ
ぼんやりとして何を考えてるのか分からないし
友達は僕以外いなかったんじゃないでしょうか
そんな彼が何を思ったかわき目もふらずに勉強を始めたのは
確か高校に入ったすぐぐらいです
みるみる成績も上がって
そりゃもう僕なんかすぐ抜かれちゃって
それどころか結局東大に合格しちゃうんだから
びっくりしてましたよ先生も
それからの彼は
って言っても
一回も会ったことないんですがね高校出てからは
それからの彼は
皆さんご存知だとは思いますが
建設省でキャリアを積み
政治家に華麗な転身
日本の高速道路網の整備に貢献したんだって聞いてます
そりゃ利権がどうのっていう人も中にはいるみたいですけどね
ただね
できたばっかりの
まだ誰も通らない道路に降りて
そう、
高速道路の追い越し車線の車線
延々とどこまでも続く白線の上を歩くのが大好きだったって
そんなことどこかで聞いたことありますよ
いや
彼らしいなって
昔とおんなじ顔してたんじゃないかな
勝手な想像だけど


自由詩 熱情 Copyright 六九郎 2008-04-21 20:14:32
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