詩人では、ない焼きたてでもないただ、さめている
木屋 亞万

朝起きたら布団がチーズになっていて
僕はトーストになっていたんだ
左脳の辺りを噛みちぎられて
イメージだけで世界は動く
しまった僕の新しい顔はもうない
昨日サンドウィッチになって
全部食べられてしまったから

どうせならあんパンになりたかった
ドラ焼き好きの青猫でもいい
クレヨンの芯のような子供でもいい
海の幸一家に加わるのもいいな
どうも片口イワシです
こっちは息子のシラスですなんて

2枚目の食パンも悪くはないのだけれど
耳切られるわ焼かれるわで
切られた耳はトンカツの衣になるわ
鳩の餌にもなるわでてんやわんや

身体の隅までひとつ残らず
食べ尽くして欲しかったのに
平凡な白い皿の上で僕は
食べ残されたトーストになった
次は片口イワシに生まれたい
子どもをたくさん産んでやる
冷めていく手足に
意識を抜かれながら
思った
とはいっても
まだ生きてる

歯型は香ばしく残っている
チーズは何も語らない
イメージはイメージでしかない


自由詩 詩人では、ない焼きたてでもないただ、さめている Copyright 木屋 亞万 2008-04-19 00:31:05
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