寒そうな部屋より
餅月兎

寒い

僕の家だけ
シベリア
いえ
僕の部屋だけ
ツンドラ

窓の外では
光を跳ね返す素材の
白いビキニさえ
ありふれているようです
布団に包まり
鼻からつらら
僕は餃子男
さわやか
じゃあないです

開かない窓
これは
窓でしょうか
絵なのでしょうか
青すぎる空の下
港にひしめく人々の間を踊る光
汽笛がきこえます
つららがもげました

その船
僕の船

その辺にこの部屋に
カメラはなかったか
餃子男は
もぞもぞと探し
港の船の
けれども窓の
僕の乗っていない船の
ピクチャー撮りました

おお寒い

壁の時計の電池を入れ換えました
針たちが元気よく走り出しました
僕は余計に歳をとりました

窓の外では
そろそろ
つややかな闇を浴びて
色鮮やかなけものたち
ゆかいに踊り
一緒に遊びたいのに
笑いたいのに
怒りたいのに
悲しみたいのに
離れてゆくばかりの
僕は誰ですか
僕は何処ですか
ああ
シベリアですか
そうでしたね
ええ
ツンドラですね
知っていますとも

ただ
この六畳間の天井から
ぽたぽたと
水漏りしているのが
気になっただけです

お別れの挨拶をしたいのですが
したいのですが
さようなら
だったのか
また会いましょう
だったのか
もう思い出せません…


自由詩 寒そうな部屋より Copyright 餅月兎 2008-04-15 21:18:15
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