かたほうの かたほうの
木立 悟
芽を花を実を
踏む道をゆき
芽を花を実を
肌に宿す
瞳のなかの高い窓から
さらに高い瞳を見るひと
影の脚が
影の胴を透り
羽の浮かぶ水
何かが去った跡へと至る
花をついばみ
鳥は人になり
冷たい道をすぎる背となり
陽が沈むまで歩みつづける
見えない花を見つめすぎて
人は鳥になり
陽が傾きはじめても
数羽もどらないものがいる
高く高く 高すぎて
歪んで割れている空の
色を失くした隙間から
芽に花に実に降りそそぐ音
午後の間だけ人だったものが
夕暮れの海へ帰ってゆく
ふとふりかえるものの片方の目に
高い窓と空を見るひと
さらに高みを旋る鳥が
金に緑にまたたいている