「上がらない顔」
菊尾

上手く機能してない頭でも
鼻歌ぐらい口ずさめるよ
こんな気持ちはよくある話だって
屈託なく笑いかけてよ

見えない手に窒息させられる
逃げ出すための算段を練っている
擦り切れた神経を片結びで縛ってやり過ごす
あんな人になれたらいいなと
他人にも自分にも夢を見る

「明日昼過ぎに広場で会おう
少し遅れても下手な言い訳でも許すから」
さっきまで聞いていた声は
懐かしくて優しくて
俺にはもったいないな


人知れず逃がしてよ
シーって口元で指立てて黙らせないで
イタズラな笑み浮かべて
まだだよなんてイジワルしないで
綺麗に何も残さないから
今日は見逃してよ



「まだその隣には並べない」
二日前の君は顔も上げずに
そう言っていた
何も返せずに
火種が灰に包まれていた


自由詩 「上がらない顔」 Copyright 菊尾 2008-04-14 18:00:20
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