夕刻の事務室で彼女は涙をこぼす
kauzak
異動先の職場に提出する書類を書きながら
彼女はポロポロと涙をこぼす
それは悔し涙だったのか
自分の人生を真摯に捉える人だからこそ
だれ憚ることなく感情を顕わにする人とは
僕は見ていなかったから
見てはいけないものを見てしまった気がして
正視できなかった
どこかで人生を諦めてしまった僕には
自負もなく流されて生きる卑怯な僕には
その悔しさが理解ができなくて
涙を流した彼女が強くなれたのか
僕には分からない
けれど
心の柔らかいところだけは見失わないで
と身勝手に願っている
卑怯にも
いや卑怯だからこそ