夕刻の事務室で彼女は涙をこぼす
kauzak

異動先の職場に提出する書類を書きながら
彼女はポロポロと涙をこぼす

それは悔し涙だったのか

自分の人生を真摯に捉える人だからこそ
だれ憚ることなく感情を顕わにする人とは
僕は見ていなかったから

見てはいけないものを見てしまった気がして
正視できなかった

どこかで人生を諦めてしまった僕には
自負もなく流されて生きる卑怯な僕には
その悔しさが理解ができなくて


涙を流した彼女が強くなれたのか
僕には分からない
けれど

心の柔らかいところだけは見失わないで
と身勝手に願っている

卑怯にも
いや卑怯だからこそ


自由詩 夕刻の事務室で彼女は涙をこぼす Copyright kauzak 2008-04-13 23:13:45
notebook Home