nice night for walk
藤坂萌子

ぽたっぽたって、
さくらが自殺してるよー
去年の知恩寺の廊下にのぼって見ている
真っ暗な庭で
夜中はきちんとほうったらかしにされたいね。
そのほうが、ずっとやすらかできれい
さくらの蕊がピンクのやつと、黄色いやつは
どうちがうの。
きっと、きみならしっているなあ
去年の知恩寺の廊下にのぼって見ている
なんとなくふらふら出てきて
帰りそびれてしまったよ
そうだ、あの境内に行こうって思いついて
いんちきソング、歌いながら
機嫌よくしてるよ
ひとりで歩く夜は、コンビニエンスストアが親しげ
梅酒ください。
おんなのこ用です。
さくらがあおいなー
白いのかな
それで、蕊がピンクのやつと黄色いやつは
どうちがうの。
なんで、ぽたっぽたって落ちるの。
今夜はちょっとさむいですね。
でも、あたしはすこし酔っ払っていて機嫌がいいから
どんどんいんちきソングの続きをうたいます
ついでに「お花見してるよー」とメールもします。
きみが、驚いているのが遠くの世界のことみたいだ
どこにいるの?って、
そんなこと、絶対おしえない。
去年の知恩寺の境内です
廊下にのぼって寝転んでいます
きみはただの親切なひとだった
どんなに、ほっぺたを押しあてても
木の肌はぴったりとしない
さみしくなるから、そんなに押し返さないでください
そうやって、感傷的になっていても
やっぱり寒いから
あったかいもののみに行くんだろ
誰も気にしてなんかないんだから
意地を張らずに
起き上がって行けばいい
大丈夫。 大丈夫。
まっくらな中、川の流れる音だけがきこえる
今日は水の量が多めです
あたしは、ふらふらしていても
こぼれないように、慎重に歩く
なんかね、中身がなくって、かえって
重心がわるいんだ
だから、こぼれないようにそっとあるく
こぼれるなにかがあると思え
明るみにメニューが並んでいる
どれでもいいような気がします。
でも、こういうときは、ずっと慎重にならないと。
ねえ 慎重にならないと。

眠ってしまうかもしれません、というと
「ソファ、あいてますから」ってお店の男の人がいいました




自由詩 nice night for walk Copyright 藤坂萌子 2008-04-13 01:49:51
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