植物園
白昼夢

長いブロンドの髪を靡かせて、あの娘が私を待っている。
早く行かねばならぬ、彼女を待たせるわけにはいかない。
走りながら噴水のウンディーネを横目で見る、私を見ていた。

薔薇の咲いた庭を駆ける、彼女は何処に。

四季折々の花たちとともに、歌声が聞こえた。
ああ、あの娘が歌っている、暇を持て余して。
日傘を差した彼女はまだ咲いていない花の蕾に囲まれていた。
こうすると早く花が咲くのよ、と言っていた。

だからこの植物園はこんなにも花で溢れているのか、夢の香すら漂う一面の花たちが。

彼女は一つ花を摘みとり、砂糖漬けにすると言って屋敷に帰っていった。

ウンディーネが私を見ている。私もそろそろ帰らねばならぬ。
夕暮れに混じり、遠くに廃墟が見える。もうあそこには誰もいないのだ。
閉じた羽を広げる。
私も巣に帰ろう。
あの娘はここにいる、そして、もうどこにもいない。

今にも朽ち果てそうなウンディーネが私を見ていた。


自由詩 植物園 Copyright 白昼夢 2008-04-10 02:40:37
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