おっぱい
リヅ

ぎゅぅってする
照れちゃうからうつむく
うつむいたら
あたしの小さなおっぱいが
君のうすい胸板を不機嫌そうに遠ざけているのが見えた

夢のおはなし
いつか君と同じベッドであたしが見た夢のおはなし

雲一つない空を遮るものが何もない大地
その真ん中で天を仰ぐ
どこからか火薬のにおいがする
平坦な戦場で
あたし、男の子になりたかった

馴染みの薄い天井を眺めてたら
愛してるって聞こえて
愛してるってあたし、返事するけど
返事ならできるんだけど
これって愛なのかな

どこまでも続く地平線
隠れる場所なんてない
男の子たちは撃ち合う
何者でもない誰かを何者でもないまま真っ白な頭で
日に焼けた肌みたいな色の土煙と例えようのない空
ギリギリの場所
それでいて永遠みたいな時間の場所
あたし、男の子になりたかった
戦場に行きたかった

男の子たちはいつも優しい
幸せなことなのかも
当たり前のことなのかも
おっぱいを掴む君の手に少し力がこもる
痛くはなかったけど
あたしを泣かせちゃうこともできるって知ってる
その手の力強さはあたしにはなくって
おっぱいはいつも不機嫌
あたし、嫉妬してる
あたし、みにくい
あたし
あたし、男の子になりたかった

荒野の真ん中で
男の子が一人立っている
誰もいない戦場で
途方に暮れている
腰を落ち着ける場所を探している

あたしの服を脱がせるくせに
君は白いシャツを着たまんまで
小さな声で抗議したら
男の裸なんか何も良いところがないからって
笑いながらボタンをゆっくりはずした
あたし、男の子になりたかった
けど、

これは夢のおはなし
いつか君と同じベッドで君の見なかった夢のおはなし
たった一人で立っている男の子に
声をかけたくて仕方なくて
誰もいない戦場に
空から響いた言葉が
愛してる
だったんでした

おっぱいが頼りなさげに震えて
もうすぐ真っ白な時間がくる
愛しさはキスまで
続きは終わってから
ギリギリの、戦場みたいな
ないものねだりのセックスをする


自由詩 おっぱい Copyright リヅ 2008-04-08 18:21:14
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