『似顔絵』
東雲 李葉

怖いものばかり溢れているから、
せめて、心の中にはきれいな景色を。
痛い言葉の刺を抜き、
現実の牙を丸くして。
悲しいことは嫌いだから、
嫌われるのも嫌うのもわたしにとっては同じこと。
優れていても劣っていても、
お金持ちでも貧乏でも、
あなたを好きなことに変わりないのに。
嫌うことと嫌われること、あなたにとっては違うこと。
わたし、あなたのこと、何も知らない。
横顔ばかりの落書き帳。
いつだって真っ直ぐ瞳を見たいのに。

描いても描いても近づけない。
描いても描いても分からない。
あなたが描いたわたしが見たい。
わたしが描いたあなたを見せたい。

辛いことばかりじゃないと、
流行の歌詞は慰める。
苦しい今日を噛み砕き、
明日のために飲み込んで。
悲しいことは嫌いだから、
嫌われることも嫌うこともわたしはどちらも大嫌い。
格好良くても悪くても、
嫌われても蔑まれても、
あなたのことしか見えてないのに。
心に描いたあなたの笑顔が、どこにもない。
わたし、あなたのこと、まだ何も知らない。
いつまでも色を知らない落書き帳。
乾いたらにじんだ顔で笑わせて。

あなたはわたしをどんな風に描いたのかな。
わたしの描いたあなたはね、
ふふふ、笑っちゃいけないね。
最後に知れたあなたとは似ても似つかぬ誰かだったよ。


自由詩 『似顔絵』 Copyright 東雲 李葉 2008-04-06 23:20:23
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