会社の飲み会
松本 卓也

まだ二十代になりたてだった頃は
自分が周りに溶け込めない原因を
責任転嫁することばかり考えていた

全社会議が終わり、その後は飲み会
いつものように空気を読まない発言と
オチに使われる存在感を活かしながら
それなりに楽しく過ごしていた

狭い座敷部屋に二十人位居たと思う
みんな心から楽しそうに笑っていて
僕だって十分に楽しかった

それでも何故だろうか
僕は浮いているような気がして
思わず後輩に金を握らせて
笑いながら逃げ出した

夜風が穏やかに街を巻いていて
どこからも賑やかな声が漏れている
どんな表情で歩いていたのだろう
軽い調子で声をかけてきた客引きが
苦笑いして道を明けたのは、何故

もう二十代も終わりかけているこの頃
自分が周りに溶け込めない原因は
寂しさを過剰に意識する心根の問題

演じていたのかさえ
楽しんでいたのかさえ
もう分からなくなっていた

週明け理由を問われたら
取り繕う言い訳などもう出来ている
それで納得されるだろうし
それ以上踏み込まれることもない

寂しいから逃げ出したって
もし口に出そう物ならば
どんな嘲笑を浴びるかも分かっている

明りも点けず潜り込んだ布団の中で
懐かしい顔と名前が次々浮かぶ
あいつらは元気なんかな
あいつらと飲みたいなって

所詮は会社の飲み会で
心根を表に出してみることが
どれだけ無駄なことなのか
分かっているつもりなんだけど


自由詩 会社の飲み会 Copyright 松本 卓也 2008-04-06 21:56:40
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