おとせかい
ゆきのかけら(翡翠)

規則正しい点滴の
落ちる雫が
音を見せつけ

皮膚へと流れる緩い粒子
管へと混ざり
音を響かす

耳に響かない
眠りに落ちる瞬間さえ
心地よい鼓動

胎内へと帰化する
温かい誘惑 全てに音
流れ廻る世界

静寂と思う
その瞬間こそ
虚無の中の旋律

溢れ出して
君の脳内に
音を作り出す

その
静寂から拾いあげる
君の音が好きだ

その
音を表し現実へ現す
君の耳が好きだ

私は音を表せない
言葉の曖昧さでしか
現せないから

不規則なようで温かい
ざわつく様で冷静な
ヘッドフォン越しの音色

この耳で聞いた
君だけの世界は
きっとずっと離れはしない

もし君が消えても
心の中で加速して
身体中響かせるだろう


消えていくわけが無い
〈君がいる〉現実だから



…君に伝わる音を作れたら
君はここから
居なくならないだろうか

君の全ての器官
感情を
震わせるような
旋律を作れたら

君を悲しませずに
済むだろうか

今はまだ
何も分からない
音に埋もれたままで
現せない文字に
埋もれたままで…


自由詩 おとせかい Copyright ゆきのかけら(翡翠) 2008-04-05 18:27:54
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