はる
aidanico

(暁のまだ白染めのころ)

徘徊をしていた鶺鴒は何時の間にか言葉を覚えて、
さくら、さくらと挨拶をする

――――あなた、何処にいらっしゃる?
手許に目を向けてもお返事は三角定規の平行線。

端麗な指先は甲斐もなく海岸線で打ちひしがれて、
涙腺の切れた豊饒の海に孵る
愛すべき黒髪のまだ玉の様に艶の光るのを、
さめざめと腫れた瞼を隠すように左手で梳く

「もう春一番の過ぎる五月だと言うのに。」


自由詩 はる Copyright aidanico 2008-04-05 14:59:10
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