[忘れな草]
東雲 李葉

雨の中での別れには密かな憧れを持っていた。

泣かないで、って言ってくれたけど。
私のためでないことくらい知っていた。
自惚れたかった笑顔も優しい言葉も、
今は風化していく思い出の中。
いつの日か私の想いに整理がついて、
きれいなリボンで束ねたら貴方のお部屋に届けてあげたい。
今はまだ淋しい花しか咲かないけど、
雲が晴れて光が差したらまた笑ってみせるから。
ただ、どうか私を忘れないで。

降り止まない雨の中、貴方は困ったように笑った。

泣かないで、って言ってくれたのが、
貴方のためだと分かっていたけど。
遠く離れた誰かを想う両目が、
束の間私を映しただけでまるで夢のようでした。
いつの日か私が他の誰かを愛して、
胸が赤く弾けたら余韻で貴方を思い出すでしょう。
今はまだ淋しい花しか知らないけど、
今度また会う時には幸せな言葉で歌うから。
待ってくれてなくてもいいから。

ただ、どうか私の名前を忘れないで。


自由詩 [忘れな草] Copyright 東雲 李葉 2008-04-04 21:37:39
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