電波日和
完食
空が青いと死にたくなるので晴れた日もやっぱり室内
燦々と太陽光の降り注ぐこの季節
太陽は今日も引き裂いてしまいたいほどに美しい
殺してしまいたいほどに愛している
これだけ愛しているのだから
きっと明日も、変わらない
空が明るいのは僕の愛のおかげかもしれない
太陽のような人に僕は成りたいね
嘘だけど。
月が綺麗な夜も好きではない
暗い世界を暗いままにしておかない理由がまったくわからない
そんな僅かな月明かりを見て
優男が「ロマンティックだね。」なんて呟いたら
殺意だけで人が殺せるかもしれない
しかし部屋を出ない僕が聞く機会はない幸い
今日も外界を拒絶するように
カーテンは閉じっぱなしだ
僕の閉鎖的な内面を現しているようで素敵!
閉じたカーテンは壁なのだ
開く筈がない
誰が開こうとするか?
それは壁なのだ
壁が開く筈がない
閉じっぱなしであることが壁の役割であって
ひらくことなどだれがのぞむだろうか?
開かないそれは
開けないものとして存在する
だから
開けるな、開けてくれるな、母上様
でもでもドアは自分で開け閉め
屋内を行ったり来たりのルーチンワーク
きっと、否、ぜったい
明日と今日を比べると驚くほどそっくり
過激な変化も些細な変化も何もないからオッズは1倍
明日の空も青いのでしょう
それが太陽の仕事で
明日の夜も明るいのでしょう
それが月の仕事で
まったく大変だよね
その一方で僕は全力を出して退屈をした
これが僕の仕事だからね
鏡を見て苦笑した
いや、これは嘲笑、そう嘲笑に違いないね
自分自身を嘲笑う
まったくもってくだらないこと
くだらなすぎて何かが出るよ
あくびでもなみだでもない
間違いなくそれら以外の何かが出る
何かはわからないが
あまりのくだらなさを流しだす何かを出さないといけないのだ
あゝくだらない
実にくだらない
こう言った思考をすることさえもくだらない
(それをくだらないと言える僕は人間であることに
くだらなさを感じているのかもしれない
(人間であるからこそくだらないのだ
人間である、思考ができる、そこからくだらなさが生まれる
(要するに僕が僕であるからくだらないのではなく
僕が人間だからくだらないのだ!
(僕のせいではなかった! やったね!)
)
)
)
明日の朝ごはんはどうしようか
「私は目玉焼きが良いわ。」
そうだね、目玉焼きぐらいしか作れないものね
「ええ、そうよ。ダーリン。」
自分自身と話し合った結果
明日のご飯はスクランブルエッグにすることにした
「反抗期なんですよ、この子。」
そうなんだ なら仕方ないよね
「実に仕方ない目玉焼きがスクランブルエッグになることぐらい
反抗期にはよくあることですしね。」
実によくあること
それは空が青いことよりもよくあること
これは誇大表現
つまりは嘘である。
何もかもが嘘なのに
わざわざ嘘であると主張することがもっともくだらないことで
あるが
そう言った格好付けを行うと決めたからには従うのが道理と言うものだ
なんて道理のかけらもねえ口で言ってみた
「いっそ、殺してしまおうか。」
いやまだ止めよう
「どうして?」
殺すのは本当に面倒くさい
「めんどくさいなら、しょうがないよね…。」
しょうがないんだ
本当にしょうがなく生きてる
だから、退屈で、退屈で、退屈で、退屈で、退屈で、退屈で、退屈で、
どこまで行っても退屈なのはしょうがなく生きてるからなんだよ
燃え上がるように生きてしまえばそれはそれで疲れるが
気楽で退屈で道楽な日々は自分自身を溶かしていく
あくびをころして
なみだをころして
何もないと表現するに値した日常
笑えないような笑えない笑える箇所が一つもない
しかし嘲笑する
「どうして?」
知るかよ。そんなもんなんだよ。
あゝ 今日もまた死にたくなった
これは本当に嘘で。
わざわざしょうがなく生きているのに死ぬのは理不尽じゃないか
死にたくなったと絶望を模倣したスタンスで居たいだけ
もし僕が殺しに来たら
僕は僕を本気を出して殺してしまうかもしれない
しょうがなく生きるには本気を出さなきゃいけないときだって
きっとあるに違いない
そのときのために
僕は今まで一度も本気を出さずに生きていた
「どうして?」
そりゃ人生で出せる本気の回数なんて
数えるくらいしかないに決まっている
本気を出すとすごい事が起きるに違いない
僕がすごくないのは一度も本気を出したことがないからで
本気を出せば本当はすごいんだぜ?
まあ そのときのために、だ
いつだろうね。
しらねえよ。
了 (嘘だけど。)