焦土金緑
木立 悟





無数のまぼろしたち
紙を折り 飛ばし
しずく集め 飲み干す
無数のまぼろしたち
すれちがい かがやき
過ぎ去りつづける


追うものなく 請うものなく
海風は強く午後を分ける
とどろきのなかの哭き声
そら灯すつらなり


何も無い場所に生まれたものと
どこかを追いやられたものとが渦まく
既に切り離されたものを切り離そうと
巨きな巨きな刃が振られる


無数のまぼろしたち
手をほどき分かれる
流れ流され
向こう岸も知らずに
無数のまぼろしたち
溺れ沈むかけらの
かがやきに刺され覆われるまま


失くすことと同じ意味の
永い道がひとつのびる
蒼と灰と そこに無いむらさき
消えては現われる金の背から
哭きつづけ哭きつづけるけだものの背から
燃え砕け燃え砕けふりそそぐみどり


無数のまぼろしたち
街を過ぎ分かれる
果てを見ないもののために
集められ 棄てられ
あるものと無いもののはざまを放ち
ただ震え満たすためだけに残された
まぼろしたち
ふたつのまぼろしたち
結べない手のひらを結びつづける


















自由詩 焦土金緑 Copyright 木立 悟 2008-04-04 10:41:03
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