『毒』
東雲 李葉

呼吸器官に異常を来す
きみの名前劇薬だなんて
空気が漏れる音だけ響く
無菌室で試したい愛
大人になったら消えるという
幼い傷跡 醜いケロイド
綺麗と言った無神経な優しさが
今となって肉を腐らす刺となる
ぼくにとっての致死量を
唇に 挟み
火葬場で愛を問い掛けたい
悪い子には痛い注射を
汚れた空気を含めてあげる
背徳者には永眠を
情けなんて偽善にもならない
無法地帯に錠剤を
利他に見せ掛け利己的に
きみの言葉はぼくのトラウマ
きみの名前は永遠にも近い睡眠薬



消化器官を逆流させる
止まることない過激な嘔吐
すり減る奥歯がギシギシ痛い
飲んだら吐くな嗽薬
大人になっても消えることない
幼い傷跡 醜いケロイド
慰めなんてもう要らないから
炎症起こしたこの皮膚を冷たい指で戒めて
きみにとっての致死量を
口 移して
最期はぼくだけ見てほしい
良い子には甘い風邪薬を
いけない味を覚えなさい
篤志家にはギロチンを
そんな優しさ望んでいない
利他主義だって排他主義
利己で慈悲を選り好み
きみの甘い甘い気配がして
吸い込んだら途端に闇が満ちる視界

呼吸器官に異常を来す
きみの名前劇薬だなんて
空気が漏れる音だけ響く
無菌室で試した愛


自由詩 『毒』 Copyright 東雲 李葉 2008-04-03 17:10:50
notebook Home 戻る  過去 未来