渡邉建志
そこはいつも夜で 小鳥が深い森にさえずっている。
聞こえるかい?ねむる森の奥で
のびやかにさえずっている声が。
…ここはそこなんだ。ぼくらは飛んだんだ。
月の照らす湖をまわる道を
ひとつのオート三輪がはしる。
一度まわるたびに暗い空へと
大きならせんを描いて。
あなたはぼくのそばにいる。
降ってくる小鳥の歌を静かに抱いて
かたちなきものを眠らせるように
あなたは歌にこたえる、とても深い声で。
エンジンの音が鈴のように響く。
遠くに見える我が家のひかり。
静かに揺れる甘いオート三輪は
ゆっくりと虹を滑りおりていく。