オレンジ
こゆり

頼りなく緩やかに
指し示した指先から
また、ひとつ
こぼれ落ちる

まるで
時間をかけて浮かび上がる
あぶり絵のよう

そっとのぞき込む君に
また、ひと雫
オレンジを搾る

波紋にはお互い
気付かないふりをして


冷えた絵からは
爽やかな
柑橘系のほのかな香り
もう
絵はがきにすら

宛名ないはがきを
オレンジに滲む海に
そっと浮かべ
静かに見送る

潮の香りと
微かな揺れを残して
また、ひとつ


自由詩 オレンジ Copyright こゆり 2008-03-28 23:14:38
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