言い分
アンテ


痛いのはきみだけじゃない
ナイフが肉を抉りながら言う
ぼくの死は無駄じゃないよね
血が空気に触れて固まりながら言う
ああこれでもう誰にも着てもらえない
シャツが真っ赤に染まりながら言う
右手は血を拭き取って
ナイフを鞘に収めて
シャツをゴミ箱に投げ捨てて
なにも言わずに去ってしまう
さて と口が言う
すこしは懲りただろう
けれどだれも応えない
なにも起こらない




自由詩 言い分 Copyright アンテ 2004-07-03 22:39:58
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