つばめ
よしおかさくら
てのひらから
つばめの影が飛び立って
どこへやら
つと
消えていきました
わたしはひとり
立ち止まっていたのです
自動車に
跳ね飛ばされるドラマを
軽くいなして歩きます
小さな翼に憧れました
風を切り分ける
上と下に
変わらぬ角度に
姿勢を保ち
行きたい方に体を傾ける
飛ぶのは
月がほしいと呟くこと
銀に広がる光の粒が
ほしい
海がほしい
波の音もほしい
沈む夕日が
とろけていく空気がほしい
飛んでいくから待っていて
あなたがほしい
漆黒の瞳
染み渡る声
一心に願い
あなたに傾き飛んでいく
小さな体に潜むのは
引力に過ぎないのではないか
(あなたの方へ飛んでいくつばめを
見送る時だけ
憧れはなく
苦しいのはどうしたことか)
てのひらから
影だけが飛び立って
旋回
あなたの頭上に辿り着きました
いつか
引き寄せられるまで
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創書日和、過去。