海は雨で荒れている
ホロウ・シカエルボク







なつが好きなきみ
なつが好きなきみと
コカ・コーラを買って
はるの海に行く




あいにく雨模様で
なみは
テトラポッドを
ひっくり返そうと躍起




そらには
どんよりと
水平線まで
雨雲があぐら掻いてる




「いい天気ですね」
あわいピンクのルージュの口を
「拗ねました」と言うかわりにすぼめて
きみはプルタブをカキンと弾く




「カリプソ」
「え?」
「カリプソみたいだ、さっきの音」
「これ?」




きみはもう一度、プルタブをカキンと弾く
「どう?」
さっきほどじゃなかった
「さっきほどじゃない」




はあぁ、とながいため息、きみは段々の堤防に腰をかけて傘をさす
「食べましょう」
「雨が降るよ」




そんなのはいい、ときみは言う
「そんなのはいいのよ」
ぼくは、わかったのかわりにうなずく
「ハンカチを敷きますか?王子様?」




ぼくは答えずに
どっかりと腰をおろす
きみは
おもしろくなかったみたいにしてる




突堤で
海の先端がくだけた
すごい音だ











すごい音だね、きみ












自由詩 海は雨で荒れている Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-03-23 23:35:47
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