そこにあらず
木立 悟






君のまますべてに到く君であれそう言わずにはいられない揺れ



望むとも望まないとも知らぬまに変わりつづける歩むものの背



午後になり来そうで来ない雨があり斜めの光に添う笛の指



遠くには水のつらなり火の飛跡ひとつはたりと瑠璃色をして



誰知らず戦地へ向かい帰らない歩みつづけるひとりたましい



語り終え語りはじめて語らずに指のかたちに残る水滴



聴くものも近づくものも無いままに洞を満たして洞となるうた



痛み失く痛む足失くなお歩む暗闇の道ほんとうの道



湯のそばにわけもなくただ水は居て湯のそばの水水を去る水



数えても数え切れない独りうた空つつく芽に季の点るとき



覆うもの追い払いまた覆うもの私の洞をついばむ鴉











短歌 そこにあらず Copyright 木立 悟 2008-03-22 21:52:04
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