野良でさえもない
松本 卓也

気忙しく流転する景色の片隅で
只管に平凡を刻んでいく人生を
ただ無造作に転がして
ただ締まりなく垂れ流す

雑居ビルの合間に重なった
生ゴミに卑しく貪りつく
道行く視線に無頓着を気取る
野良犬がただ羨ましかった

彼は何よりも気高く渾身の生を刻む
たとえその末路が野垂れ死にであろうと
生ききった事を誇るのだろう
後悔など微塵も感じずに

人並サイズの図体に
ネズミ程度の肝っ玉
誰かに憎まれる事も無く
誰かを憎む事も無く

見比べれば単純な図式
誇り高さを忘れた現状
噛み殺した幾百の咆哮
やり遂げるだけの業務

重ねた理屈に差した嫌気が
何処までも世界を狭めていく
ただ生き残りたいだけなのに
僕は何故こうも小さいの


自由詩 野良でさえもない Copyright 松本 卓也 2008-03-18 00:19:48
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