いきぐるしい夜
高島津諦
私が「死にたい」というと
貴方は「みんな弱さを抱えて生きているんだよ」と言う
その意味が分からなくて
私はカロリーメイトを口に詰め込む
口の中で砂になっていくそれを
或いは砂になっていく口を
低脂肪乳で流し込む
1リットルの紙パックから直接飲む
食器を使おうとしない私は
人間から遠ざかっていくように見えるかもしれない
死にたいと言う言葉は嘘じゃない
でも正しくもない
空っぽの私は
周りに誤解をさせて
私は凄いのだと虚勢を張って
私は美しいのだと見栄を張って
そうしなければ保つことができない
本当のことは
唐突に鳴る電話のベルとか
使っただけ汚れる食器とか
同じ時間に起きる毎日とか
どこからか流れる噂話とか
部屋に立ち籠める体臭とか
社会に課せられる義務とか
何度でも繰り返す失敗とか
そんなのが嫌なだけで
そんなものたちの中で生きるのが嫌なだけで
本当は
暗い台所で冷蔵庫がほえている
四日洗っていない髪がベトつく
貴方と私の反響が頭蓋を満たす
私はまた「死にたいよ」と呟き
誠意なんて全然籠めないで願う
世界中の人間が楽しく生きられますように