春、冷たいまま
ANA

季節の変わり目に
心だけ置いてきぼりにされた
そんな私のおなかは
春の夜風にさらされて
きりきりと痛む
手を当てると 
こんなにも冷たい

夢の柱がぐらついて
今現実に引き戻された
打ち破られた惰眠が
ガラガラと音を立てて崩れ落ちながら
はなびらの欠片となって
色の無い世界に
積もる、降り積もる
そこから芽吹いた新しい命が
あっというまに広がって
もう完全にそこは別世界
人々はうかれている
女は美しくなる
新しい太陽がすぐそこにある

私は
長い夜が明けてしまったから
逃げ込む闇はもうそこにはない
と気づいた

冬から冷え切ったままの私の体は
まだ何かをひきずっている
暖かなぬくもりを感じたくて
今、ようやく夢の中から這い出そうと
土の中の心地よい感触を懐かしみながらも
ゆっくりゆっくり目を覚まそうと

しかしどうだろう
現実とは残酷なものだ
春はいつだって、冬を裏切る。

腹の痛みは癒えずに
感覚さえ奪って
まだ私の体は冷たいままだ







自由詩 春、冷たいまま Copyright ANA 2008-03-14 02:12:38
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