URASHIMA2000
餅月兎

小糠雨が街に灰色の影を被せていたその日
道の隅でひっくり返ってもがいている亀を見た

差していた傘をそこへ置き
亀をもう一度ひっくり返し
歩けるように直した
しばらくじっとしていたそいつは
自らの状態を
納得したのか
していないのか
歩き出した

人ごみの中を歩いていたら
古い友の横顔を遠くに見た
声をかけようかと思ったが
なぜかそれが出来なかった
からっぽの心を持て余した
からっぽの僕



道路が近かったので
亀が気になり戻ってみると
もうあたりにその姿はなかった

いったいあいつは
何故ひっくり返っていたんだ
そんなことを考えながら
どこへか歩いた

いつのまにか
雨が止んでいた事に気付き
傘をたたんだ
ぬれたアスファルトが
黒っぽく光って
僕を見つめていた


自由詩 URASHIMA2000 Copyright 餅月兎 2008-03-08 22:01:46
notebook Home 戻る