ひとつ はじまる
木立 悟




布の上の鉛の絵
波に途切れ 文字になる
唱いかけ
波間の火を見
唱いだす


歯車の音がしている
陽の芯からの風にまぎれ
さらに さらに遠去かる


刺さることのない笑みがあり
曲がり角を照らしている
それでも迷い 転ぶものがあり
ゆうるりとゆうるりと立ち上がり
ゆうるりとゆうるりと夜になる


鎮めるための石のかたちに
家々が原を囲んで建ち並び
音の光を反射している
耳はなつかたち
空ひらくかたち


左手の文字が窓になり
遠去かる雨を映している
ただ在るほうへ さまようほうへ
ひとつかたむき ふたつかたむき
右手に滴を呑ませてゆく


大きく蒼く
息をついて
うたははじまり
うたははじまり
さらに さらにはじまってゆく
















自由詩 ひとつ はじまる Copyright 木立 悟 2008-03-06 19:26:07
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