水の恋歌
石瀬琳々

私は流れてゆく
水のようになめらかに
時には滔々とうとう
時には穏やかなせせらぎになり


私に映るのは雲の流れ
陽のきらめきがいくつも反射する
あるいは透過して泳ぐ魚の群れ
闇が奏でる光の輪
鮮やかな夕光の染みが広がり
やがて沈んだ夜に支配される


一日が始まり
一日が終わってゆく


水紋をくっきりと描いて
ある日浮かぶ舟もある
やさしい指先で水を撫ぜ
あなたの舟は私をひどく惑わせる
そっと覗き込む水底に
何が映っているのだろうか


私はあなたへ手をのばす
風が水面を踊ってゆく
寄りそう心に花もこぼれ
あなたはそれが見えるだろうか
私の心に深く深く沈んでゆく
一輪の小さな花を


私は見つめている
去ってゆこうとする舟足を


舟を沈めたいと願うのは
ほんのつかのまのかげ
そして私は流れてゆくのだ
水のようにまたなめらかに



自由詩 水の恋歌 Copyright 石瀬琳々 2008-03-05 13:55:43
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